使徒言行録8章

(1)サウロは、ステファノの殺害に賛成していた。
◆エルサレムの教会に対する迫害
その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちのほかは皆、ユダヤとサマリアの地方に散って行った。(2)しかし、信仰深い人々がステファノを葬り、彼のことを思って大変悲しんだ。(3)一方、サウロは家から家へと押し入って教会を荒らし、男女を問わず引き出して牢に送っていた。

◆サマリアで福音が告げ知らされる
(4)さて、散って行った人々は、福音を告げ知らせながら巡り歩いた。(5)フィリポはサマリアの町に下って、人々にキリストを宣べ伝えた。(6)群衆は、フィリポの行うしるしを見聞きしていたので、こぞってその話に聞き入った。
(7)実際、汚れた霊に取りつかれた多くの人たちからは、その霊が大声で叫びながら出て行き、多くの中風患者や足の不自由な人もいやしてもらった。(8)町の人々は大変喜んだ。
(9)ところで、この町に以前からシモンという人がいて、魔術を使ってサマリアの人々を驚かせ、偉大な人物と自称していた。(10)それで、小さな者から大きな者に至るまで皆、「この人こそ偉大なものといわれる神の力だ」と言って注目していた。(11)人々が彼に注目したのは、長い間その魔術に心を奪われていたからである。(12)しかし、フィリポが神の国とイエス・キリストの名について福音を告げ知らせるのを人々は信じ、男も女も洗礼を受けた。(13)シモン自身も信じて洗礼を受け、いつもフィリポにつき従い、すばらしいしるしと奇跡が行われるのを見て驚いていた。
(14)エルサレムにいた使徒たちは、サマリアの人々が神の言葉を受け入れたと聞き、ペトロとヨハネをそこへ行かせた。(15)二人はサマリアに下って行き、聖霊を受けるようにとその人々のために祈った。(16)人々は主イエスの名によって洗礼を受けていただけで、聖霊はまだだれの上にも降っていなかったからである。(17)ペトロとヨハネが人々の上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた。(18)シモンは、使徒たちが手を置くことで、“霊”が与えられるのを見、金を持って来て、(19)言った。「わたしが手を置けば、だれでも聖霊が受けられるように、わたしにもその力を授けてください。」(20)すると、ペトロは言った。「この金は、お前と一緒に滅びてしまうがよい。神の賜物を金で手に入れられると思っているからだ。(21)お前はこのことに何のかかわりもなければ、権利もない。お前の心が神の前に正しくないからだ。(22)この悪事を悔い改め、主に祈れ。そのような心の思いでも、赦していただけるかもしれないからだ。(23)お前は腹黒い者であり、悪の縄目に縛られていることが、わたしには分かっている。」(24)シモンは答えた。「おっしゃったことが何一つわたしの身に起こらないように、主に祈ってください。」
(25)このように、ペトロとヨハネは、主の言葉を力強く証しして語った後、サマリアの多くの村で福音を告げ知らせて、エルサレムに帰って行った。

◆フィリポとエチオピアの高官
(26)さて、主の天使はフィリポに、「ここをたって南に向かい、エルサレムからガザへ下る道に行け」と言った。そこは寂しい道である。(27)フィリポはすぐ出かけて行った。折から、エチオピアの女王カンダケの高官で、女王の全財産の管理をしていたエチオピア人の宦官が、エルサレムに礼拝に来て、
(28)帰る途中であった。彼は、馬車に乗って預言者イザヤの書を朗読していた。(29)すると、“霊”がフィリポに、「追いかけて、あの馬車と一緒に行け」と言った。(30)フィリポが走り寄ると、預言者イザヤの書を朗読しているのが聞こえたので、「読んでいることがお分かりになりますか」と言った。(31)宦官は、「手引きしてくれる人がなければ、どうして分かりましょう」と言い、馬車に乗ってそばに座るようにフィリポに頼んだ。(32)彼が朗読していた聖書の個所はこれである。
「彼は、羊のように屠り場に引かれて行った。
毛を刈る者の前で黙している小羊のように、
口を開かない。
(33)卑しめられて、その裁きも行われなかった。
だれが、その子孫について語れるだろう。
彼の命は地上から取り去られるからだ。」
(34)宦官はフィリポに言った。「どうぞ教えてください。預言者は、だれについてこう言っているのでしょうか。自分についてですか。だれかほかの人についてですか。」(35)そこで、フィリポは口を開き、聖書のこの個所から説きおこして、イエスについて福音を告げ知らせた。(36)道を進んで行くうちに、彼らは水のある所に来た。宦官は言った。「ここに水があります。洗礼を受けるのに、何か妨げがあるでしょうか。」†(38)そして、車を止めさせた。フィリポと宦官は二人とも水の中に入って行き、フィリポは宦官に洗礼を授けた。(39)彼らが水の中から上がると、主の霊がフィリポを連れ去った。宦官はもはやフィリポの姿を見なかったが、喜びにあふれて旅を続けた。(40)フィリポはアゾトに姿を現した。そして、すべての町を巡りながら福音を告げ知らせ、カイサリアまで行った。