マルコによる福音書1章

イエス、洗礼を受ける

(9)そのころ、イエスはガリラヤのナザレから来て、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられた。(10)水の中から上がるとすぐ、天が裂けて“霊”が鳩のように御自分に降って来るのを、御覧になった。(11)すると、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が、天から聞こえた。

誘惑を受ける

(12)それから、“霊”はイエスを荒れ野に送り出した。(13)イエスは四十日間そこにとどまり、サタンから誘惑を受けられた。その間、野獣と一緒におられたが、天使たちが仕えていた。

ガリラヤで伝道を始める

(14)ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤへ行き、神の福音を宣べ伝えて、(15)「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」と言われた。

四人の漁師を弟子にする

(16)イエスは、ガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、シモンとシモンの兄弟アンデレが湖で網を打っているのを御覧になった。彼らは漁師だった。 (17)イエスは、「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と言われた。(18)二人はすぐに網を捨てて従った。(19)また、少し進んで、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネが、舟の中で網の手入れをしているのを御覧になると、(20)すぐに彼らをお呼びになった。この二人も父ゼベダイを雇い人たちと一緒に舟に残して、イエスの後について行った。

汚れた霊に取りつかれた男をいやす

(21)一行はカファルナウムに着いた。イエスは、安息日に会堂に入って教え始められた。(22)人々はその教えに非常に驚いた。律法学者のようにではなく、権威ある者としてお教えになったからである。(23)そのとき、この会堂に汚れた霊に取りつかれた男がいて叫んだ。(24)「ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに来たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」(25)イエスが、「黙れ。この人から出て行け」とお叱りになると、(26)汚れた霊はその人にけいれんを起こさせ、大声をあげて出て行った。(27)人々は皆驚いて、論じ合った。「これはいったいどういうことなのだ。権威ある新しい教えだ。この人が汚れた霊に命じると、その言うことを聴く。」(28)イエスの評判は、たちまちガリラヤ地方の隅々にまで広まった。

多くの病人をいやす

(29)すぐに、一行は会堂を出て、シモンとアンデレの家に行った。ヤコブとヨハネも一緒であった。(30)シモンのしゅうとめが熱を出して寝ていたので、人々は早速、彼女のことをイエスに話した。(31)イエスがそばに行き、手を取って起こされると、熱は去り、彼女は一同をもてなした。(32)夕方になって日が沈むと、人々は、病人や悪霊に取りつかれた者を皆、イエスのもとに連れて来た。(33)町中の人が、戸口に集まった。(34)イエスは、いろいろな病気にかかっている大勢の人たちをいやし、また、多くの悪霊を追い出して、悪霊にものを言うことをお許しにならなかった。悪霊はイエスを知っていたからである。

巡回して宣教する

(35)朝早くまだ暗いうちに、イエスは起きて、人里離れた所へ出て行き、そこで祈っておられた。(36)シモンとその仲間はイエスの後を追い、(37)見つけると、「みんなが捜しています」と言った。(38)イエスは言われた。「近くのほかの町や村へ行こう。そこでも、わたしは宣教する。そのためにわたしは出て来たのである。」 (39)そして、ガリラヤ中の会堂に行き、宣教し、悪霊を追い出された。

らい病を患っている人をいやす

(40)さて、らい病を患っている人が、イエスのところに来てひざまずいて願い、「御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。(41)イエスが深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、(42)たちまちらい病は去り、その人は清くなった。(43)イエスはすぐにその人を立ち去らせようとし、厳しく注意して、(44)言われた。「だれにも、何も話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めたものを清めのために献げて、人々に証明しなさい。」(45)しかし、彼はそこを立ち去ると、大いにこの出来事を人々に告げ、言い広め始めた。それで、イエスはもはや公然と町に入ることができず、町の外の人のいない所におられた。それでも、人々は四方からイエスのところに集まって来た。